小沢一郎氏(C)日刊ゲンダイ
安保法案を潰す秘策を話そう/小沢一郎 <第5回>安倍首相の「テロは起きない」はウソである
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2015年8月1日 日刊ゲンダイ
安保法案が成立し、安倍政権が自由に自衛隊を海外派兵できるようになった場合、この国はどうなるのか、どういう問題が生じるのか、あらためて考える必要がある。
まずは、自衛隊が直接“軍隊組織”として紛争に関係するのだから、それだけで自衛隊の危険性が高まるという問題をはらんでいるのは間違いない。しかし、それ以上に最も心配なのは、日本国内でテロが起きるリスクが高まるということだ。
安倍首相はテレビ出演した際、コメンテーターの女性に「日本でテロが起きやすくなるのではないか」と質問され、「全くない」と即答した。だが、それはウソだ。今年1月の安倍首相の中東歴訪を思い出して欲しい。よりによってイスラエルで「有志国連合の一員としてIS(イスラム国)と戦う」と発言し、それがきっかけで、日本人2人が殺害されてしまったではないか。あんなひどい事態を自ら引き起こしておいて、なぜ「テロはない」と言い切れるのか。
もともとアラブ世界は、日本に対して悪い感情を持っていなかった。特にアフガニスタンなどは、常にロシアの脅威にさらされてきたから、日露戦争で日本が勝利したことなどから、単純に対日感情はよかった。アフガンで長年、井戸掘りなど農民の生活のための支援事業を行ってきたNGO「ペシャワール会」の医師・中村哲さんがこんな話をしていた。
「以前は日章旗を付けて作業をしていれば、タリバンもアルカイダも襲撃してこなかった。ところが、小泉政権が米国のアフガン戦争を支持し、日本が米国と一体だとみなされるようになったことで反日感情が生まれ、善意の支援事業がやりにくくなった」
ISなどイスラム過激派と戦うため、日本も“軍隊”を派遣するということになれば、たとえそれが後方支援であったとしても、完全に敵視されるだろう。そうなると日本はテロの対象になりやすい。
先日、新幹線で男性が焼身自殺しただけで大変な騒ぎになった。あれが爆弾だったら、2、3カ所で同時に爆破されたらどうなるのか。大勢の犠牲者が出るだけでなく、経済も麻痺する。原発が狙われたら、さらに恐ろしい事態になる。安保法案は、こうしたテロの脅威と隣り合わせの事態をもたらす。
だからこそ私は、国際紛争には国連を通じて参加すべきだと言い続けている。国連の一員である限りは、日本だけがテロの標的になることはない。国際紛争の解決は、あくまでも日本国憲法と国連憲章にのっとった方針でやるべきだ。
このまま安保法案が成立したら、事件が起きてから日本人は後悔することになってしまう。だから、なんとしても廃案にして、安倍政権を退陣に追い込む以外にない。参院での徹底審議を国民的な反対の声が後押しすれば、絶対に廃案にできる。