80. 2011年1月08日 16:47:03: oJfY8U1yJE
§6.当該の土地が「宅地」であった場合の取引と仕訳 ---
ケースA:タンス預金が「個人小澤一郎の資金」の場合
疑問5~7については、会計処理の問題に深く関係しているため、正確を期すために、個々のステップ毎に複式簿記の仕訳を用いて説明する。
※1.政治資金報告書は単式簿記であり、かつ、全ての資金の出納ではなく、一部の科目のみを記載する限定列挙方式となっている。
所有権移転時に必要となる登録免許税の支払については、「個人小澤一郎が納税」→「陸山会が個人小澤一郎に支払う」というステップを経ることになるが、後述するように、立替金については政治資金報告書の記載対象項目ではない。
※2.簡単の為、単位は千円単位とし、「固定資産税調整金」は除外して考える。
※3.とあるのは、会計処理上は個人一郎の会計処理であるが、
実際にその取引を行ったのは、秘書石川知裕氏ほかである。
※4.「手付金」の10,000,000については、通常、同月内の取引であることから、取引不成立による所謂「手付流れ」にならない限り、区分経理はしないのが一般的である。政治資金報告書は年間単位の資金の出納の報告を要求しており、月次締さえも要求していない。従って、手付金の区分経理を行わなかったことによる違法性はない。
§2で述べたように、陸山会が当該土地の専用使用権を得るためには、「売主(T社)から個人小澤一郎への所有権の移転の完了」が前提となる。そこで、理解を容易にするために、まず、当該の土地が宅地であった場合の取引について仕訳を用いて説明する。なお、平成16年(2004年)10月28日までに農地法関係の手続きが完了しており、同日付で、個人小澤一郎への所有権移転登記が可能であった場合も、この場合に準ずることとなる。
この場合の土地取引のステップは、次のようになる。
①売主(T社)と個人小澤一郎の取引、及び、所有権移転登記
②個人小澤一郎と陸山会の取引(専用使用権の設定)、及び、確認書締結
③決済(支払)
④陸山会における資金枯渇防止対策としての個人小澤からの借入
§4で指摘したように、③の決済は陸山会→個人小澤一郎→売主(T社)ではなく、陸山会→売主(T社)となることに注意が必要である。なぜなら、§4の[5]で指摘したように、現金の輸送にはリスクが伴うだけでなく、現金輸送車・警備の手配によるコストが多額になるためである。
[0]会計担当の秘書石川知裕氏が、世田谷区深沢の小澤一郎氏自宅から、タンス預金4億円を、小沢事務所(チュリス赤坂701)に移動
○平成16年10月4日以前
仕訳なし
(0.1)
仕訳なし (0.2)
「タンス預金」が「個人小澤一郎の資金」であり、現金の場所を移動するだけでは、会計上の仕訳は発生しない。通常、政治家の事務所の金庫は、「個人資金のスペース」と「政治団体のスペース」に区分されており、この場合も金庫内の「陸山会棚」でなく「個人小澤一郎棚」に格納されたと考えられる。疑問5にも関係するが、現金の場所を移動するだけでは、政治資金報告書上の「借入金」には該当しない。
※銀行の貸金庫に入金しただけでは「預金」とはならず、当然利息が付かないのと同様である。
[1]売主(T社)と個人小澤一郎の取引(所有権移転)(ステップ①)
○平成16年10月29日(午前)
未収金 342,000 /
土地 ・・・
/ 有形固定資産売却益 ・・・ (1.1)
※(1.1)の右辺の合計は342,000であるが、内訳は不明。
土地 342,000 / 未払金 342,000 (1.2)
この取引を登記の原因事項として、世田谷登記所に所有権移転登記を行う。
[2]個人小澤一郎と陸山会の取引(専用使用権の設定)
(ステップ②)
個人小澤一郎と陸山会の間で、「使用権に関する確認書」を締結することにより、次の仕訳が発生する。
○平成16年10月29日(午前)
未収金 342,000 / 土地 342,000 (2.1)
土地 342,000 / 未払金 342,000 (2.2)
[3]ここで、[1]と[2]の取引を合算すると次のようになる。
○平成16年10月29日(午前)
未収金 342,000 /
土地 ・・・
/ 有形固定資産売却益 ・・・ (3.1)
仕訳なし (3.2)
土地 342,000 / 未払金 342,000 (3.3)
このように、債権は売主にあり、債務は陸山会にあることになる。従って、資金の決済は、個人小澤一郎を経由せずに、陸山会→売主(T社)で行われる。この場合は、現金輸送車・警備の手配、及び、金融機関における真贋検査・ラッピングは不要である。
[4]決済(支払) (ステップ③)
○平成16年10月29日(午前)
現金預金 342,000 / 未収金 342,000 (4.1)
仕訳なし (4.2)
未払金 342,000 / 現金預金 342,000 (4.3)
[5]ステップ①~③の累計
○平成16年10月29日(午前)
(5.1)
現金預金 342,000 /
土地 ・・・
/ 有形固定資産売却益 ・・・ (5.1)
仕訳なし (5.2)
土地 342,000 / 現金預金 342,000 (5.3)
§4の[6]で指摘したように、平成16年10月時点において、陸山会には資金的余裕が無く、このままでは運転資金が不足することになる。そこで、個人小澤一郎からの4億円の借入を行う。ただし、実際の現金の動きは、小沢事務所内部の金庫の内部の移動(または仕切板の移動)であることに注意が必要である。この場合、現金輸送車の手配・警備・金融機関における真贋検査及びラッピングは不要である。
[6]
陸山会における資金枯渇防止対策としての個人小澤からの借入
(ステップ⑥)
○平成16年10月29日以降の数日以内(金庫内部の移動)
貸付金 400,000 / 現金預金 400,000 (6.1)
現金預金 400,000 / 借入金 400,000 (6.2)
[7]ステップ①~④の累計
○平成16年12月末時点
現金預金 342,000 / 土地 ・・・
/ 有形固定資産売却益 ・・・ (7.1)
貸付金 400,000 / 現金預金 400,000 (7.2)
土地 342,000 / 借入金 400,000
現金預金 58,000 / (7.3)
このように、運転資金は枯渇しない。従って、当該土地が宅地であった場合、または、農地法関係の手続きが平成16年10月28日以前に完了していた場合は、[0]において小澤私邸から小沢事務所に移動したタンス預金の4億円は、会計上も当初の予定通り「個人小澤一郎から陸山会に対する貸付金」になっていたと考えられる。
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