“こんな人たち”の復讐劇 反安倍クーデターのノロシ上がる(日刊ゲンダイ)

投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 7 月 21 日 19:55:05:  


  


   長らく続いた「安倍1強政治」、明らかに潮目が変わった(C)日刊ゲンダイ

 ボロボロだ。20日の定例会見で菅官房長官は、追い詰められ、追い込まれ、苦しい弁明を繰り出すしかなかった。

 南スーダンPKOの日報の「非公開」を稲田防衛相が了承したとされる“隠蔽疑惑”。菅は、「徹底した調査が必要だ」と答え、特別防衛監察の調査対象にこの一件も含まれると明言せざるを得なくなった。まとまった報告書で、事務方は処分しても、調査対象外の政務三役は責任回避する手はずが狂った。

 そのうえ、山本地方創生相が国家戦略特区による獣医学部新設が決まる2カ月前に「加計学園が事業者」と獣医師会に伝えていたとされる疑惑も発覚。菅はこれについても「山本氏がきちんと説明する」と言わざるを得ず、いつもの「あたらない」「問題ない」で擁護することはできなかった。

 週明けに安倍首相出席の集中審議を控え、国民から厳しい視線が注がれている手前、ゼロ回答はイメージが悪い。次々出てきた不都合な疑惑に、菅は苦渋の表情だ。

 長らく続いた「安倍1強」政治は、明らかに潮目が変わった。政権を取り巻くありとあらゆる状況が逆回転している。

 都議選惨敗と支持率急落がその象徴だが、ひとつのきっかけは、秋葉原で「こんな人たち」と指さして侮蔑した、安倍のあの傲慢な態度にある。まがりなりにも国民の一員なのに、意見が違う、逆らうヤツらは「こんな人たち」扱い。もっとも、その思想は、安倍政治のすべてに通じている。

■絶対王政の支配層と下僕

 周囲を身内で固め、政府と国民との関係を、民主主義のなかった中世貴族社会の絶対王政のような支配層と下僕の関係に貶めた。それは、立憲主義を否定し、黒を白と言い張り、独裁国家さながらだ。しかし、そんな恐怖支配が4年半も続けば、抑圧された人々の我慢も限界である。

 稲田と山本の両大臣を窮地に追い込むリーク情報は、責任と処分を押し付けられる現場の陸上自衛隊の反乱であり、お友達に利益を付け替えるご都合主義を「規制改革」だとアピールすることで、守旧派のレッテルを貼られた獣医師会の反発が根っこにある。文科省から内部文書が次々流出したのだってそうだ。つまり、虐げられてきた「こんな人たち」の復讐劇が始まったのである。

 上智大教授の中野晃一氏(政治学)はこう言う。

「民主党政権は『官僚を使いこなせなかった』と言われました。それを受け、『決められる政治』を行うとして登場した安倍政権は、『官僚をうまく使いこなしている』と言われてきた。しかし、一連の失態で、それがいかに空疎なものだったのかが明らかになりました。安倍政権は官僚を使いこなしていたのではなく“私物化”していたのです。防衛省の問題は深刻です。もともと上意下達の保守的な組織なのに、大臣があまりにヒドすぎて、現場が反乱を起こしているのが現状。文民統制が利いていないわけで、マズい状況です。それぐらい安倍政権は横暴が過ぎ、ボロが出てきてしまったということなのでしょうけれど」

  


   裏切りの連合(神津里季会長)(C)日刊ゲンダイ

あらゆる階層が「もう黙ってはいられない」と決起

 こうなると、安倍1強が続くとみて、迎合してきた連中の「わが世の春」は続かない。反安倍クーデターののろしが上がれば、政権もろともジ・エンド。しっぺ返しはもう始まっている。

 政治家としての素養を磨くわけでもなく、首相出身派閥という“温室”で遊んでいたチルドレンたち。「このハゲーー!」の豊田真由子衆院議員は、元秘書に告発され、傷害容疑で摘発の瀬戸際。いまだ表に出てこられない。重婚スキャンダルの中川俊直衆院議員は、2万円の政治資金パーティーという非常識な「おわびの会」が中止に追い込まれた。これらに続きかねないクズ議員が自民党にはワンサカいる。

「公平公正」を装いながら安倍に忖度してきたメディアもその実態が白日の下にさらされつつある。

 安倍と懇意の解説委員が政権スポークスマンを担うNHK。真っ先にスッパ抜いたはずの文科省文書で政権に都合の悪い部分を黒塗りしていたことがバレ、一番最初に行ったはずの前川前文科次官のインタビューがいまだ放送されていないことを、前川氏本人に暴露された。

 その前川氏を、出会い系通いのいかがわしい官僚に貶めようとした読売新聞は、記事に対して読者からの抗議が殺到したという。

■労働者の声を聞け!

 裏切りの本性があらわになったのは連合だ。政策実現のため、労働者のため、と詭弁を弄し、その実、やっぱり、支配階級側に付きたい労働貴族だったじゃないか。第2次安倍政権発足直後の2013年に官邸主導の「政労使会議」のテーブルに着いた時からその傾向が透けて見えたが、さすがに反対から百八十度転換した「残業代ゼロ法案」での合意には、ア然ボー然である。

 そんな連合に対し、労働者が牙をむいた。19日、連合本部前にデモ隊100人が結集。「残業を勝手に売るな」とシュプレヒコールを上げた。報じた朝日新聞によれば、参加者のひとりが「労働者に囲まれ、デモまでされる労働組合とは一体何なのか」と怒っていたというが、その通りだ。

 結局、傘下の労働組合からも批判が噴出し、神津里季生会長の退任と、政権との談合を進めた張本人である逢見直人事務局長への禅譲計画は引っ込めざるを得なくなった。

「連合は民進党の支持母体ですが、自民党政権が長期化する中で冷や飯が続き、政権との距離感の取り方が難しくなっていた。そんな中で、旧同盟系の右派と旧総評系の左派の対立があり、右派は共産党とも組む野党共闘に反対してきた。そこに楔を打ち込もうとしたのが安倍官邸です。逢見事務局長が菅官房長官に一本釣りされ、『残業代ゼロ法案』で暴走した。連合会館の前で抗議デモを受けたのには驚きましたが、『労働者の声を聞け』と批判されるのは当然です」(中野晃一氏=前出)

■この国を悪くしたのは誰だ

 経済産業省も反安倍クーデターにやられる口だ。安倍政権は別名「経産省内閣」と呼ばれてきた。経産省出身の今井尚哉政務秘書官が菅とともに官邸を牛耳ってきたからである。原発死守で東電や東芝救済も経産省の意向。霞が関人事にも口出しして好き勝手やってきた。

 本来、政府から独立しているはずの日銀も青ざめているはずだ。安倍政権と一体になって、破綻したアベノミクスを「道半ば」と言い続けてきたが、きのう、「物価上昇率2%」の達成時期をまた先送りした。実に延期は6度目だ。

 立正大名誉教授の金子勝氏はこう言う。

「実態はそうではなくても、安倍首相が『うまくいっている』と言うので多くは批判せず、目をつぶってきた。しかし、もはや上っ面さえも取り繕うことができないぐらいにさまざまな問題が噴出してしまった。こうなると、安倍1強が続くと思って、セルフコントロールしていた人たちが動きだす。文科省や防衛省に代表されるように政府内部からの反乱が起き、支持率が30%を割るまでに続落してくれば、黙っていた人たちも、『私も言わなくちゃ』という気になる。あらゆる階層で『反安倍』が大きな流れになってきました」

 安倍とお仲間連中が、特権意識よろしく、私利私欲、個利個略に走ってこの国を悪くした。お人よしな国民も、さすがにそのおかしさに気づいた。いよいよ大逆襲が始まったのである。